乳歯が抜ける順番、ズレても大丈夫?親が見るべきサイン

実は、乳歯は決まった順番どおりに抜けるものだと思っていませんか?
「うちの子だけ順番が違う」「友だちはもう抜けたのに」と心配して来院される親御さんは、毎月のようにいらっしゃいます。
都内で歯科医院を開いている、歯科医師の柏木です。

結論から言うと、順番や時期が多少ズレるのはよくあることです。
この記事では、全国調査のデータをもとに心配いらないズレと、早めに相談してほしいサインの見分け方をお伝えします。

乳歯が抜ける順番と時期の目安

下の前歯から始まり、12歳前後で終わる

生え変わりは、家の建て替えに似ています。
新しい家(永久歯)の工事が歯ぐきの下で進むと、古い家(乳歯)の土台である根が少しずつ溶かされ、ぐらついて抜けていきます。
つまり、乳歯が抜ける順番は「下で待っている永久歯の工事がどこから進むか」で決まります。

一般的には、下の前歯が5歳半〜6歳ごろに最初に抜けます。
次に上の前歯、その横の歯と続き、8歳前後で前歯の入れ替わりがひと段落します。
そこから1〜2年ほど間が空き、9歳ごろから犬歯と奥の乳歯が抜けはじめて、12歳前後で乳歯はすべて永久歯に入れ替わります。

全国3万人の調査で見る生え変わりの時期

日本小児歯科学会が2015〜2016年に全国の子ども30,825人を調べた日本人小児における乳歯・永久歯の萌出時期に関する調査研究II(永久歯)から、永久歯が生えてくる時期を抜き出しました。
乳歯は、その少し前に抜けると考えてください。

生えてくる永久歯男の子女の子
下の前歯(真ん中)5歳6か月〜7歳0か月5歳5か月〜6歳7か月
上の前歯(真ん中)6歳6か月〜7歳10か月6歳3か月〜7歳7か月
下の前歯(2番目)6歳3か月〜8歳3か月6歳3か月〜7歳8か月
上の前歯(2番目)7歳6か月〜9歳2か月7歳2か月〜8歳8か月
下の犬歯9歳2か月〜11歳3か月8歳8か月〜10歳5か月
上の犬歯9歳10か月〜12歳1か月9歳2か月〜11歳4か月
小臼歯(上下の4・5番目)9歳1か月〜13歳2か月8歳11か月〜13歳1か月
6歳臼歯(第一大臼歯)5歳10か月〜8歳7か月5歳6か月〜8歳4か月

6歳臼歯は乳歯と入れ替わるのではなく、いちばん奥の乳歯のさらに後ろに新しく生えてきます。
「抜けていないのに歯が増えた」と驚かれることがありますが、この歯であれば正常です。

平均の幅に収まるのは7割ほど

表の年齢は、平均値にばらつきの目安(標準偏差)を前後に1つずつ足した幅です。
統計的には、この幅に入る子はおよそ7割しかいません。
残りの3割は、表より早いか遅いかのどちらかに外れます。

表から半年ほど外れていても、それだけで異常と決めつける必要はありません。
日本歯科医師会の歯とお口の発生と育ち方でも、生え変わりの時期や順序には遺伝や全身的な要因による個人差があると説明されています。
ちなみにこの調査では、小臼歯や6歳臼歯が生える時期が約30年前より遅くなっていました。
親御さん世代の「自分は何歳で抜けた」という記憶は、あまり当てにならないのです。

心配しなくていい「順番のズレ」

前歯より先に6歳臼歯が生えてくる

同じ調査では、前歯と6歳臼歯のどちらが先に生えたかも調べています。
上あごでは7割以上の子で6歳臼歯が先でした。
下あごでも、男の子の約3割、女の子の約4割は6歳臼歯が前歯より先に生えています。

乳歯がまだ1本も抜けていないのに奥に大きな歯が生えてきても、順番が狂ったわけではありません。
むしろこの歯は、これから一生使う噛み合わせの基準になる大黒柱です。

上の犬歯は小臼歯より後回しになる

下あごは前から順に抜けていくことが多いのですが、上あごは少し違います。
上の犬歯は、その奥にある第一小臼歯(前から4番目の歯)より後に生え変わるのが普通です。
前から数えて3番目の乳歯だけがいつまでも残っていても、上の歯なら焦らなくて大丈夫です。

左右で数か月ずれる、女の子は早め

右は抜けたのに左はまだ、という左右差もよく見かけます。
数か月程度のズレなら、ほとんどの場合は時間が解決します。
抜けた側の歯ぐきをそっと触ってみて、硬いふくらみが感じられれば、永久歯が下で出番を待っている合図です。
また、この調査ではすべての歯で女の子のほうが早く生えていました。
きょうだいで比べるときは、性別の違いも頭に入れておいてください。

早めに歯科医院へ相談したいサイン

ここまでは「心配いらないズレ」でした。
ここからは、私が診療で「これは一度見せてほしい」と考えるサインです。

4歳より前に乳歯が抜けた

転んでぶつけたなどのケガがないのに、4歳前に乳歯が抜けた場合は受診してください。
難病情報センターの低ホスファターゼ症のページでは、4歳までに乳歯が抜けてしまう「乳歯の早期脱落」が、この病気の患者さんにしばしば見られる症状として挙げられています。
骨や歯を丈夫にする仕組みに関わる病気で、歯科医院で見つかるきっかけになることがあります。
抜けた歯が手元にあれば、捨てずに持ってきてください。

永久歯が生えたのに乳歯がぐらつかない

下の前歯では、永久歯が乳歯の内側(舌側)から顔を出すことがよくあります。
乳歯がグラグラしているなら、多くは自然に抜けて、永久歯も舌に押されて前へ移動していきます。
揺れ具合は、手を洗ってから乳歯を指先で前後に軽く押してみると分かります。
無理に引っぱって抜こうとすると、根が折れて残ることがあるので、確かめるだけにしてください。

気をつけたいのは、永久歯が見えているのに乳歯がほとんど揺れていないケースです。
車でいえば、新車が届いたのに古い車が駐車場から出ていかない状態で、新車は空いている場所に斜めに停めるしかありません。
日本小児歯科学会のこどもたちの口と歯の質問箱でも、乳歯の根がうまく吸収されなかった可能性があり、早めに抜歯すると歯並びの乱れを防げる場合があると回答しています。
内側や横から生えてきて乳歯が揺れていないときは、様子を見ずに受診してください。

片側だけ、半年たっても生えてこない

乳歯が抜けて半年以上たっても永久歯が出てこない、あるいは反対側は生えたのに片方だけ半年以上出てこない場合は、私ならレントゲンで歯ぐきの下を確認します。
考えられる原因は、次のようなものです。

  • 永久歯がもともとない(先天性欠如)
  • 余分な歯(過剰歯)が通り道をふさいでいる
  • 永久歯の向きがずれて、骨の中で止まっている(埋伏)

先天性欠如は珍しい話ではありません。
日本小児歯科学会が2010年に発表した全国調査では、7歳以上の子どもの10.09%に、親知らずを除く永久歯の欠如が見つかっています。
多かったのは、下の前から5番目と2番目の歯でした。
早く分かれば、乳歯をできるだけ長持ちさせるなど、その後の選択肢が広がります。

受診といっても、多くは歯全体を1枚に写すレントゲンで、永久歯があるか、どこで止まっているかを確認するところから始まります。
「生えてこない」と悩んで何か月も過ごすより、下の様子を一度見てしまったほうが、親御さんの気持ちもずっと楽になります。

様子見でよいか迷ったときの早見表

迷ったときは、次の表で照らし合わせてみてください。

お子さんの様子判断の目安
6歳臼歯が前歯より先に生えた様子見でよい
上の犬歯だけが残っている(9〜11歳ごろ)様子見でよい
左右差が数か月程度様子見でよい
永久歯が内側から出てきたが、乳歯はグラグラ自然に抜けるのを待つ
永久歯が見えているのに、乳歯が揺れていない早めに受診
ケガもないのに4歳前に抜けた受診
抜けて半年以上、または片側だけ半年以上生えない受診してレントゲンで確認
歯ぐきが腫れている、痛がる受診

生え変わり期に家でできること

抜けた日と場所をメモしておく

受診したときに役立つのは、親御さんの記憶よりも記録です。
「右下の前歯、8月10日」くらいの簡単なメモで十分です。
スマホで口の中を撮っておくと、左右差や生え方の変化があとで比べやすくなります。

生えたての永久歯は仕上げ磨きで守る

生えたばかりの永久歯は、表面がまだ未熟で虫歯になりやすい状態が2〜3年続きます。
特に6歳臼歯は、背が低くて歯ブラシが届きにくいのに、溝が深くて汚れがたまりやすい歯です。
新築の家ほど、最初の数年の手入れがその後の傷み具合を左右します。

私自身、10歳で永久歯の神経を抜いた経験があります。
あのとき誰かが奥歯を気にかけてくれていたら、と今でも思います。
歯は、削れば削るほど寿命が縮みます。
小学校低学年のうちは、奥歯だけでも親御さんが仕上げ磨きをしてあげてください。

まとめ

乳歯が抜ける順番や時期は、表どおりにいかないほうがむしろ普通です。
6歳臼歯が先に生える、上の犬歯が後回しになる、左右で数か月ずれるといった違いは、心配しなくてかまいません。

一方で、4歳前に乳歯が抜けた、永久歯が見えているのに乳歯が揺れない、片側だけ半年以上生えてこない、という3つは早めに相談してほしいサインです。
どれも、見つけるのが早いほど選べる治療が増えます。

まずは今夜、仕上げ磨きのついでにお子さんの口の中をのぞいて、抜けた歯と生えてきた歯をメモしてみてください。
一生、自分の歯でステーキを食べられる口は、この数年の観察から始まります。