実は、「冷たい水がしみるのは、もう年だから仕方ない」と思っていませんか。
診療室でも、40代を過ぎた方からよく聞きます。
「先生、最近やけに水がしみるんです。年齢ですかね」と。
たしかに、年齢とともに歯ぐきが下がったり、歯の表面がすり減ったりして、知覚過敏が出やすくなることはあります。
でも、年のせいだけで片づけるのは少し危ない。
冷たい水がしみる裏には、知覚過敏だけでなく、虫歯、歯のヒビ、歯周病、食いしばり、酸っぱい飲食物による歯のダメージが隠れていることもあります。
同じ「しみる」でも、原因はひとつではありません。
こんにちは。
柏木デンタルクリニックの柏木健介です。
私はもともと、かなりの歯医者嫌いでした。
虫歯を隠して放置し、10歳で永久歯の神経を抜くことになった人間です。
あの痛みと怖さは、今でも忘れません。
だからこそ、患者さんには「痛くなってから慌てる」前に知っておいてほしいんです。
歯は、削れば削るほど寿命が縮みます。
知覚過敏も、早めに原因を見つければ、削らずに済むケースがたくさんあります。
この記事では、冷たい水がしみる本当の理由、虫歯との見分け方、今日からできる対策まで、診察室でお話しするように整理していきます。
怖がらせるためではありません。
自分の歯を守る判断材料を、手元に置いてもらうためです。
目次
冷たい水がしみるのは、歯の中の「警報装置」が反応しているから
歯は外壁と配線でできた家に似ています
歯を家にたとえると、外側の硬い壁がエナメル質です。
その内側に、象牙質という少しやわらかい層があります。
さらに奥には、神経や血管が入った歯髄があります。
健康な歯では、エナメル質や歯ぐきが外壁の役目をして、神経を守っています。
ところが、外壁が削れたり、歯ぐきが下がったりすると、象牙質が外に顔を出します。
象牙質には、細い管が無数に通っています。
専門的には象牙細管と呼びます。
かなり細かい配線のようなものです。
冷たい水が当たると、その管の中の液体が動きます。
その刺激が神経に伝わって、「キーン」としみる。
これが、知覚過敏の基本的な仕組みです。
米国歯科医師会の患者向け情報でも、歯ぐきが下がって象牙質が露出すると、熱いもの、冷たいもの、甘いもの、酸っぱいものなどで歯が敏感になると説明されています。
詳しくは米国歯科医師会の知覚過敏解説が参考になります。
「年齢」ではなく「守りが薄くなった場所」がしみます
知覚過敏は、年齢そのものが原因ではありません。
正確には、年齢を重ねる中で起きやすい変化が関係します。
たとえば、長年の歯みがきで歯の根元が削れる。
歯周病で歯ぐきが下がる。
食いしばりで歯に細かな負担がかかる。
酸っぱい飲み物をよく飲んで、歯の表面が溶けやすくなる。
こうした積み重ねで、歯の守りが薄くなった場所がしみます。
40代、50代で増えやすいのは事実です。
でも、20代でも起きます。
年齢であきらめる話ではありません。
原因を探して、これ以上進ませない工夫をする話です。
しみる痛みは「一瞬」が多い
典型的な知覚過敏は、冷たい水や風が当たった瞬間にキーンとしみて、刺激がなくなると短時間でおさまります。
たとえば、うがいをしたときだけしみる。
アイスを食べた最初のひと口だけ痛い。
歯ブラシが根元に当たるとピリッとする。
こういう出方なら、知覚過敏の可能性があります。
ただし、これだけで自己判断はできません。
痛みが長く残る。
何もしなくてもズキズキする。
噛むと痛い。
一ヶ所だけ強く痛む。
このあたりがあるなら、虫歯や歯のヒビ、神経の炎症も疑います。
ここは我慢比べをしないでください。
早く見せてもらったほうが、歯を削らずに済む確率が上がります。
知覚過敏を起こしやすい5つの原因
歯ぐきが下がって、根元が露出している
大人の知覚過敏で多いのが、歯ぐき下がりです。
歯ぐきが下がると、本来は歯ぐきに守られていた歯の根元が出てきます。
歯の頭の部分はエナメル質で守られています。
一方、根元はエナメル質に覆われていません。
つまり、根元は最初から外壁が薄い場所。
家でいえば、外壁ではなく配管まわりがむき出しになっているような状態です。
そこに冷たい水が当たれば、しみやすい。
当たり前といえば当たり前です。
歯ぐき下がりの背景には、歯周病、強すぎる歯みがき、歯並び、加齢、食いしばりなどがあります。
ひとつだけでなく、複数が重なっていることも珍しくありません。
厚生労働省のe-ヘルスネットでは、歯周病が歯ぐきや歯を支える骨に影響する病気として説明されています。
歯ぐきの状態を知るうえでは、歯周疾患のページも参考になります。
歯みがきの力が強すぎる
「毎日しっかり磨いているのに、なぜしみるんですか」
この質問、診療室で本当によくあります。
しっかり磨くこと自体は悪くありません。
ただ、力まかせにゴシゴシ磨くと、歯の根元や歯ぐきを傷めます。
日曜大工で木材を磨くとき、粗い紙やすりで同じ場所ばかりこすれば、そこだけ削れますよね。
歯も同じです。
硬めの歯ブラシで、横方向に強くこする。
しかも毎日。
これを何年も続けると、根元がくさび状に削れてくることがあります。
歯みがきは、力の勝負ではありません。
汚れを落とす作業です。
目安としては、歯ブラシの毛先が広がらない程度の力。
鉛筆を持つくらいの軽さで十分です。
「磨いた感」がないと不安な方ほど、力が入りやすい。
ここは少し意識してみてください。
食いしばりや歯ぎしりで、歯に細かなヒビや負担がかかっている
食いしばりは、知覚過敏の隠れた原因です。
歯は硬いので、少しくらい力がかかっても平気に見えます。
でも、毎晩ぐっと噛みしめたり、日中に無意識で奥歯を合わせ続けたりすると、歯の根元に負担が集中します。
車でいえば、ずっとブレーキを軽く踏みながら走っているようなもの。
すぐ壊れるわけではありません。
でも、部品にはじわじわ負担がたまります。
歯の根元が欠ける。
詰め物の境目にすき間ができる。
細かなヒビが入る。
歯ぐきに近い部分がしみる。
こうした症状が出ることがあります。
朝起きたときに顎がだるい。
頬の内側に噛んだ跡がある。
舌のふちがギザギザしている。
集中していると上下の歯が触れている。
このあたりに心当たりがあれば、食いしばりを疑ってください。
自覚がない方も多いです。
本人より、歯のほうが先に悲鳴を上げていることがあります。
酸っぱいもの、炭酸、スポーツドリンクで歯が溶けやすくなっている
酸は、歯の表面をやわらかくします。
これを酸蝕といいます。
酸っぱいものを食べるな、という話ではありません。
私も食べ歩きが好きですし、ステーキの横にレモンを絞ることもあります。
問題は、頻度と飲み方です。
炭酸飲料、スポーツドリンク、酢のドリンク、柑橘系のジュース、ワイン。
こうした酸性の飲み物を、時間をかけてちびちび飲む。
すると、歯が酸にさらされる時間が長くなります。
米国国立歯科・頭蓋顔面研究所は、虫歯予防の説明の中で、口の中の細菌が糖を使って酸を作り、その酸が歯の表面を傷める流れを紹介しています。
歯を酸から守る基本を知るなら、米国国立歯科・頭蓋顔面研究所の虫歯解説が読みやすいです。
酸性の飲み物を飲んだ直後は、歯の表面が少しやわらかくなっています。
そこで強く磨くと、やわらかくなった表面をこすってしまう。
飲んだ後は、水で口をゆすぐ。
歯みがきは少し時間を置く。
これだけでも、歯への当たり方が変わります。
ホワイトニングや歯科治療の後に一時的にしみることもある
ホワイトニング後に歯がしみることがあります。
これは一時的なことも多いです。
また、詰め物をした後、歯石を取った後、歯ぐきの治療をした後に、しばらくしみる場合もあります。
隠れていた根元がきれいになって、刺激を感じやすくなることがあるからです。
ただし、「治療後だから仕方ない」と長く放置するのは違います。
数日から数週間で落ち着くケースもありますが、痛みが強い、噛むと痛い、どんどん悪化するなら確認が必要です。
治療した歯ほど、遠慮なく相談してください。
患者さんが気を遣うところではありません。
知覚過敏と虫歯は、どう見分けるのか
痛みの「残り方」を見る
知覚過敏と虫歯は、どちらも冷たいものがしみます。
ここがややこしいところです。
ひとつの目安は、痛みの残り方。
知覚過敏は、刺激がなくなるとスッと引くことが多いです。
虫歯が進んで神経に近づいている場合は、冷たいものがしみたあとに痛みがしばらく残ることがあります。
もちろん、これだけで断定はできません。
でも、診療室でお話を聞くときも、「いつ痛いか」「どれくらい続くか」は必ず確認します。
表にすると、ざっくりこんな違いです。
| 症状の出方 | 知覚過敏で多いパターン | 虫歯などで気になるパターン |
|---|---|---|
| 冷たい水 | 当たった瞬間だけしみる | しみた後もしばらく痛む |
| 甘いもの | しみることもある | 強くしみる、痛みが残る |
| 何もしていない時 | 痛みは少ない | ズキズキすることがある |
| 噛んだ時 | 基本は痛くないことが多い | 噛むと痛い、響く |
| 見た目 | 根元が露出していることがある | 黒い穴、欠け、詰め物のすき間があることも |
この表は、あくまで目安です。
実際にはレントゲンや視診、風を当てる検査、噛み合わせの確認を組み合わせます。
自己判断で「これは知覚過敏だな」と決めるのは、少し早い。
特に、痛みが増えているなら一度見せてください。
一ヶ所だけ強くしみる場合は要注意
歯全体がなんとなくしみる。
左右どちらかの歯ぐき近くがしみる。
こういう場合は知覚過敏を疑いやすいです。
一方で、「右下のこの歯だけ、冷たい水で強く痛い」という場合は注意します。
虫歯、歯のヒビ、詰め物の不具合、歯の根のトラブルが隠れていることがあります。
特に、噛んだときにピリッとする。
硬いものを噛むと痛い。
痛む場所が一点に絞れる。
これは歯のヒビでもよく聞く訴えです。
ヒビは見た目でわかりにくいこともあります。
模型作りでいうなら、表面はきれいでも、内側に細い亀裂が入っている状態。
負荷をかけた瞬間に開いて痛みが出ます。
「冷たいものだけだから大丈夫」とは限りません。
一ヶ所だけ強い痛みがあるなら、早めにチェックしたほうがいいです。
市販の知覚過敏用歯みがき粉で様子を見ていいケース
症状が軽い。
痛みが一瞬で引く。
見た目に穴や欠けがない。
最近、歯みがきの力が強かった自覚がある。
こういう場合は、知覚過敏用の歯みがき粉を2週間ほど使って様子を見るのも一つです。
知覚過敏用の歯みがき粉には、刺激が神経に伝わりにくくなる成分や、象牙細管をふさぐ働きを狙った成分が使われています。
すぐに劇的に効くというより、毎日使って少しずつ楽になるイメージです。
ただし、次のような場合は様子見をやめてください。
- 痛みが日に日に強くなっている
- 何もしなくてもズキズキする
- 冷たいものだけでなく、温かいものもしみる
- 噛むと痛い
- 歯に穴、黒ずみ、欠けがある
- 2週間ほど使っても変化がない
ここで粘る必要はありません。
早く原因を見つけたほうが、治療は小さく済みます。
家でできる知覚過敏対策
歯ブラシは「やわらかめ」で、押しつけない
まず変えてほしいのは、歯みがきの力です。
知覚過敏がある方に「いつも通り磨いてみてください」とお願いすると、思った以上に強い力で磨いていることがあります。
本人は普通のつもり。
でも、歯ぐきから見るとかなりハードです。
おすすめは、やわらかめの歯ブラシ。
毛先を歯と歯ぐきの境目に軽く当て、小さく動かします。
大きく横にゴシゴシ動かす必要はありません。
歯ブラシの交換時期も見てください。
1ヶ月も経たないうちに毛先が広がるなら、力が強すぎるサインです。
歯みがきは洗車に似ています。
泥を落としたいからといって、硬いブラシでボディをこすり続けたら傷がつきます。
歯も同じ。
汚れは落とす。
でも、歯と歯ぐきは削らない。
このバランスです。
知覚過敏用歯みがき粉は、すすぎすぎない
知覚過敏用の歯みがき粉を使っているのに効かない。
そういう方に多いのが、最後に何度も口をすすいでいるケースです。
歯みがき粉の成分を歯に残したいのに、仕上げで全部洗い流している。
これだと、少しもったいない。
泡が気持ち悪くない範囲で、すすぎは少なめに。
水を少量ふくんで、軽く1回程度で十分です。
英国国民保健サービスも、フッ化物入り歯みがき粉を使った後は、吐き出して、すぐに水で口をすすぎすぎないことをすすめています。
虫歯予防の基本としても、英国国民保健サービスの歯みがき解説は参考になります。
寝る前は特に大事です。
夜は唾液が減ります。
歯を守る成分を少し残して眠るほうが、歯にとってはありがたい環境です。
酸っぱい飲み物は「回数」と「だらだら飲み」を減らす
酸っぱい飲み物を全部やめる必要はありません。
私も、食の楽しみまで奪うような指導はしたくないです。
ただ、だらだら飲みは減らしましょう。
仕事中にデスクへ炭酸飲料を置いて、午前中ずっと少しずつ飲む。
スポーツドリンクを水代わりに飲む。
健康のために酢のドリンクを毎日ちびちび飲む。
歯からすると、酸のシャワーを長時間浴びている状態です。
対策は難しくありません。
- 飲むなら時間を決めて飲む
- 飲んだ後に水を飲む、または口をゆすぐ
- ちびちび飲みを減らす
- 寝る前の酸っぱい飲み物は避ける
- 酸性飲料の直後に強く磨かない
これくらいで十分、歯の負担は変わります。
完璧でなくていいです。
まずは80点を取りにいきましょう。
上下の歯を離す時間を増やす
食いしばり対策で、今日からできることがあります。
上下の歯を離すことです。
本来、何もしていないとき、上下の歯は軽く離れています。
唇は閉じていても、歯は接触していない。
これが自然な状態です。
ところが、パソコン作業中、スマホを見ているとき、運転中、料理中。
無意識に奥歯が当たっている方がいます。
これを完全にやめるのは難しいです。
だから、気づく仕組みを作ります。
たとえば、パソコンの端に小さな付箋を貼る。
スマホの待ち受けに「歯、離す」と書く。
仕事の区切りで、ふっと息を吐いて顎の力を抜く。
地味ですが、効きます。
マウスピースが必要な方もいますが、まずは日中の接触を減らすだけでも歯の負担は変わります。
歯科医院では何をするのか
原因を見つける検査から始めます
知覚過敏の治療は、いきなり削るものではありません。
少なくとも私の診療では、まず原因探しから始めます。
冷たい風を当てて、どの歯が反応するか。
歯ぐきが下がっていないか。
虫歯がないか。
詰め物のすき間はないか。
噛み合わせに強い当たりがないか。
必要に応じてレントゲンも確認します。
ここで大切なのは、「しみる場所」と「原因の場所」が必ずしも同じとは限らないことです。
奥歯の食いしばりが、手前の根元のしみにつながることもあります。
口の中は、思ったより複雑なダンジョンです。
一緒に地図を見ながら攻略していく感じですね。
薬を塗る、コーティングする、噛み合わせを調整する
軽い知覚過敏なら、歯に薬を塗って刺激を伝わりにくくします。
象牙細管をふさぐイメージです。
根元が削れている場合は、樹脂で薄くコーティングすることもあります。
削るというより、露出した部分にカバーをかける治療です。
食いしばりや歯ぎしりが強い場合は、噛み合わせの確認やマウスピースを検討します。
歯ブラシの当て方も一緒に見直します。
治療の選択肢は、原因によって変わります。
「しみるから全部同じ薬」ではありません。
そこを間違えると、一時的に楽になってもまた戻ります。
虫歯やヒビがあれば、知覚過敏とは別の治療が必要です
もし虫歯が見つかれば、虫歯の治療が必要です。
ヒビがあれば、ヒビの深さや痛みの出方を見ながら対応します。
ここで無理に「知覚過敏ですね」と決めつけるのは危険です。
特に、痛みが長く残る場合や、噛んだときの痛みがある場合。
神経に近いトラブルが起きていることもあります。
クリーブランド・クリニックの解説でも、歯の感覚過敏には歯ぐき下がりやエナメル質の摩耗だけでなく、虫歯、ヒビ、歯周病など複数の原因があるとされています。
症状の背景を幅広く見るなら、クリーブランド・クリニックの知覚過敏解説も参考になります。
私は、できるだけ削らない方針です。
ただ、削らないことが目的になりすぎて、必要な治療を遅らせるのも違います。
歯を守るために削らない。
歯を守るために、必要なら最小限で治療する。
この判断が大事です。
放置していい知覚過敏、放置してはいけないしみ方
軽くなっているなら、セルフケアで様子を見る余地があります
歯みがきの力を弱めた。
知覚過敏用歯みがき粉を使った。
酸っぱい飲み物の回数を減らした。
上下の歯を離す意識をした。
これでしみ方が明らかに軽くなっているなら、セルフケアが合っている可能性があります。
ただし、完全にゼロにならなくても焦りすぎないでください。
知覚過敏は、今日のケアが明日すぐ結果になるとは限りません。
歯の表面や根元の状態、噛み合わせ、生活習慣が絡みます。
2週間から1ヶ月ほど見て、少しずつ楽になるなら良い流れです。
逆に変化がないなら、原因が別にあるかもしれません。
こんな症状は早めに受診してください
次のようなしみ方は、早めに歯科医院で見てもらってください。
- 冷たいものがしみた後、痛みが長く残る
- 温かいものまでしみる
- 何もしなくてもズキズキする
- 噛むと痛い
- 歯に穴や欠けがある
- 歯ぐきが腫れている、出血がある
- しみる場所が一ヶ所にはっきり絞れる
- 症状がだんだん強くなっている
このあたりは、「知覚過敏かも」で済ませないほうがいいです。
早く受診したからといって、必ず大きな治療になるわけではありません。
むしろ逆です。
早いほど、小さく済むことが多い。
私が一番避けたいのは、「まだ大丈夫」と粘って、神経を取るところまで進んでしまうことです。
10歳の私が、それをやりました。
本当におすすめしません。
痛み止めでごまかすのは、ブレーカーを戻し続けるようなもの
しみる、痛い。
でも忙しい。
とりあえず痛み止めで乗り切る。
気持ちはわかります。
仕事も家事もありますし、歯医者に行く時間を作るのは面倒です。
でも、痛みは体の警報です。
家でブレーカーが何度も落ちているのに、原因を見ずに毎回戻しているようなもの。
配線に問題があるなら、いつか大きなトラブルになります。
歯の痛みも同じです。
薬で感じにくくしても、原因が消えるわけではありません。
特に、繰り返す痛みは放置しないでください。
知覚過敏を繰り返さないための予防習慣
「磨く」より「傷めず落とす」に切り替える
知覚過敏を繰り返す方は、歯みがきの考え方を少し変えてください。
目的は、強く磨くことではありません。
プラークを落とすことです。
プラークは、歯の垢であり、細菌のマンションのようなもの。
これを毎日ため込まないことが大切です。
ただし、歯ブラシだけでは歯と歯の間の汚れは落ちにくい。
歯みがきだけするのは、洗車だけしてエンジンオイルを交換しないのと同じです。
見えるところはきれいでも、肝心なすき間に汚れが残ります。
フロスや歯間ブラシを足しましょう。
毎食後に完璧でなくてもかまいません。
まずは夜だけ。
奥歯だけ。
それでも一歩前進です。
定期検診は「痛い場所を探す日」ではなく「壊れる前に整える日」
日本ではまだ、「歯医者は痛くなってから行く場所」という感覚が根強いです。
私はこれを変えたい。
定期検診は、怒られに行く日ではありません。
壊れる前に整える日です。
歯ぐきが下がり始めていないか。
磨き残しが同じ場所に出ていないか。
噛み合わせに負担が出ていないか。
詰め物の境目にすき間がないか。
こういう小さな変化を見つけるために行きます。
車検と同じです。
エンジンが焼きついてから修理するより、オイル交換で済ませたほうがいい。
歯もまったく同じです。
80点のケアを続けるほうが、100点を3日でやめるより強い
開業したばかりの頃、私は理想のブラッシング指導をかなり厳しく伝えていました。
正しいことを言っているつもりでした。
でも、患者さんは続かない。
通院から離れてしまう方もいました。
そこで痛感しました。
正しいことでも、続けられなければ意味がない。
今は、ズボラでも80点を取れるケアを一緒に探します。
朝は忙しいなら夜を厚くする。
フロスが苦手ならホルダータイプから始める。
歯ブラシが強いなら、まずやわらかめに変える。
炭酸が好きなら、だらだら飲みだけやめる。
これでいいんです。
歯を守る習慣は、気合いより設計です。
続く形にした人が勝ちます。
まとめ
冷たい水がしみる原因は、年齢だけではありません。
歯ぐき下がり、歯の根元の露出、強すぎる歯みがき、食いしばり、酸性の飲み物、虫歯やヒビ。
いろいろな原因が重なって起きます。
典型的な知覚過敏は、冷たい刺激で一瞬しみて、すぐにおさまることが多いです。
でも、痛みが長く残る、噛むと痛い、何もしなくてもズキズキする場合は、早めに歯科医院で確認してください。
家でできることもあります。
やわらかめの歯ブラシに変える。
力を抜いて磨く。
知覚過敏用歯みがき粉を使い、すすぎすぎない。
酸っぱい飲み物のだらだら飲みを減らす。
上下の歯を離す時間を増やす。
全部を一気にやらなくて大丈夫です。
まずは今夜、歯ブラシを持つ力だけ弱めてみてください。
毛先を歯ぐきにそっと当てて、小さく動かす。
その小さな一手が、将来の大きな治療を遠ざけます。
一生、自分の歯でステーキを食べたくありませんか。
私は、その未来のために知覚過敏を軽く見ないでほしいと思っています。
